【書評_追記】内部モデルと歩行トレーニング
昨日紹介した『脳卒中片麻痺者に対する歩行トレーニング』の中で
京都大学の大畑先生がロボットアシスト歩行トレーニングに関して,
非常に興味深い記載をしていたので,少しだけ自分なりに整理してみる.
運動制御・運動学習の理論の一つとして,内部モデルがある.
内部モデルの考え方では,
キネティクスからキネマティクスを演算する順モデルがあると仮定している.
この二つのモデルから,人間は適切な運動プログラミング(キネティクス)を立てて,
かつ演算された感覚入力(キネマティクス)と実際の感覚入力を比較して,
さらなる内部モデルを形成する.
脳卒中により運動麻痺などの障害が生じると,目標とするキネマティクスが
演算されたキネティクスでは達成されなくなる(逆モデルが障害される).
さらに,目標とするキネマティクスが達成されないので,出力したキネティクスに
基づくキネマティクスを演算する順モデルも障害される.
その繰り返しにより,内部モデルが間違った方向に変容していく.
これは,臨床的に表現するなら『悪い癖がついた』状態と言えると.
さて,そのような状態を打破するにはどうしたら良いか.
ここでロボットアシストの登場.
対象者が間違った逆モデルに基づく運動出力を行ったとしても,
ロボットアシストにより正しいキネマティクスに補正することで,
正しい感覚入力を発生させることで,順モデルを正常化させ,
さらには逆モデルを修正しよう!という発想です.
書籍の中ではロボットアシストの有用性を説明するために記載されていましたが,
装具療法や様々な運動学習場面に適応できる考え方かと思います.
個人的に臨床で難渋する印象がある,間違った学習・癖の修正を,
このような内部モデルに基づいて整理したことはとても分かりやすいと感じました.
内部モデルに関しては,まだその存在について議論が続いています.
また,歩行にも内部モデル理論が当てはまると言えるのかは,
今後の基礎研究待ちかと思いますが(報告があればすいません・・・),
非常に興味深い内容でした.