【書評】脳卒中片麻痺者に対する歩行リハビリテーション
11月に仙台で行われた神経理学療法学会学術集会で,
先行販売されていた書籍『脳卒中片麻痺者に対する歩行リハビリテーション』
を最近読み終えたので感想を.
この本は,広南病院の阿部先生と京都大学の大畑先生が編集しているということで
気になって立ち読みして,そのまま会場で即購入してしまいました.
さて内容ですが,装具療法を軸に,脳卒中片麻痺者に歩行のリハビリテーションを行う
上で考慮すべき,①基礎理論(神経科学・生体工学・運動学習),②評価,
③病期別のトレーニング,④装具療法の地域連携,
⑤新しいトレーニング戦略(Neuro Modulationやロボット)から構成され,
かなり幅広い範囲がカバーされています.
個人的に感じたこの本の特徴は,病期別に装具療法を行う上での臨床的なポイントを
整理している点と,装具療法の地域連携を解説している点かなと思います.
病期別のトレーニングでは,臨床で遭遇する諸々の問題への具体的な解決策やアイデア
が提示されています.私は回復期病棟勤務なので,もちろん回復期の内容はすぐに臨床
に生きるような内容でした.
一方,生活期の内容などは,自分が退院させた患者が今後直面する
可能性が高い問題などが説明されており,非常に勉強になりました.
地域連携に関しては,著者らの地域での取り組みが紹介されており,
今後,様々な地域でも取り組まれるべき内容かと感じました(実際に私の地域でも
このような取り組みにつながる活動を来年から開始しようと準備しています).
もう一点.
大畑先生がロボットを活用した歩行トレーニングの解説をしているのですが,
ここで解説されている内容はロボットリハだけではなく,
運動制御・運動学習理論を踏まえて歩行トレーニングを行う上で,
非常に重要な示唆であるように感じました.
個人的には必読かと思います.
幅広い分野をカバーしているので,一つ一つの項目の分量はそれほどでもないですが,
脳卒中片麻痺者の歩行トレーニング(装具療法)の全体像を把握する上では
非常に良い本なのではないでしょうか.
なお,仙台の学会中に行われた講演とかなり内容は重複しているので,
学会の復習にもなりますし,参加していない人はこの本を読めば講演内容は
かなりフォローできると思います.